👨💼 はじめに
「データに基づいた意思決定」と聞くと、統計学やプログラミングに詳しい「データサイエンティスト」の採用が必要だと考えがちです。しかし、多くの専門職を雇うリソースがない中小企業にとって、それは現実的ではありません。
安心してください。中小企業のデータ活用は、高スキルな専門家ではなく、既存の社員の「現場感覚」と「Excelスキル」を活かすことから始められます。
1. 「分析」ではなく「計測」と「可視化」に特化する
中小企業が初期段階で目指すべきは、複雑な予測モデルを組むことではありません。「現状を正しく把握すること」です。
- スキルセットの転換:
- 不要なスキル: Python、R言語、高度な機械学習
- 必要なスキル:
- 計測(ルール化): どのデータを、いつ、誰が記録するかをルール化する能力。
- 整理(Excel/スプレッドシート): データを整形し、基本的な関数(SUM, AVERAGE, COUNTIFなど)を使って集計する能力。
- 可視化(グラフ): 集計結果を、一目でメッセージが伝わるグラフにする能力。
- 担当者: 経理・営業事務担当者、または数字に苦手意識のない若手社員が適任です。
2. 既存のツールを「データ活用ツール」に変える
高額なBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを購入する前に、すでに社内にあるツールを最大限に活用しましょう。
| 既存ツール | データ活用できること | 担当者の役割 |
| Excel / Googleスプレッドシート | 売上・在庫・顧客リストの集計、簡単なクロス集計、グラフ化。 | 事務担当者、営業担当者 |
| Google Analytics(無料版) | Webサイトへの流入元、どのページで離脱したか、顧客の行動分析。 | Web担当者、広報担当者 |
| SaaSツール(CRM/SFA) | 顧客の購買履歴、商談進捗の可視化。 | 営業担当者 |
3. 「現場の知恵」とデータスキルを組み合わせる
データ活用で最も重要なのは、「現場の課題」を知っていることです。
- ベテラン社員: 課題と勘所を提供する(「このデータがわかれば、仕入れの失敗が減るはず」)。
- 若手社員: データ整理・集計技術を提供する(「そのデータをExcelでこう集計すれば、傾向が見えます」)。
両者のスキルを組み合わせるチーム体制こそが、中小企業における最適なデータ活用法です。
📌 まとめ
データサイエンティストは不要。まずは既存の社員が身近なツールでデータを「計測」「整理」「可視化」するところから始めましょう。次回の記事からは、具体的なデータの集め方と整え方の基本スキルを見ていきます。


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